■ 行こか、戻ろか! そりゃ、問題だ!
2002年6月 尾瀬の燧ケ岳に登りました。
6月と言えば世間は春から初夏へと季節が移るのですが、尾瀬はまだ冬のなごりが色濃く残っています。
途中の登山道にはまだ残雪があり、先人の足跡をたどりながら、どんどん登ることが出来ます。
普段ならくねくね曲がっている登山道も、雪の季節には直線で登ることが出来るのです。
登山道のような窪みには雪が溜まるので、この時期には道が無いのです。 ですから、以前人が歩いた跡を私も登る!
燧ケ岳の山頂には、まだかなりの残雪がありました。 尾瀬ヶ原の対面にある至仏山にも残雪ありです。
で、長英新道を尾瀬沼方面に降りる途中でこの「事件」は起こったのです。
普通、登山道には目印として、木の枝に赤いテープが付いています。 例え雪のある時期でも、見える位置にね!
それが何故だか見えなくなったのです。 でも先人の足跡は確かにくっきりと前方に伸びている。
頭の中が???(メタパニ)状態。 で、下の方を見ると、50mほど下った所に10人ほどの人がいるではないか。
何か変だ! 周りはこれまで見たことのない風景。 下の方の連中も少し変だと思っている様子です。
雪に埋まった尾根沿いの笹薮から樹林地帯に入るところで留まっています。 私の記憶が確かならば場所的に言って、
まだ樹林地帯に入るような所ではありません。 でも、雪に登山道が埋もれている状況では私の記憶もあまり定かではない!
「おーい、そっちは道が違うようだよ!」と声をかけ、降りないでしばらく様子を見ることにして、私は小休止。
ちょっと離れた位置から会話をすると、3つのパーティがいて、みんな燧ケ岳は初めてだそうです。
私も残雪期は初めてなので、道を外れているのは判りますが、50mを登って戻れ!というほどの自信がありません。
すると一人の親父が「俺が藪こぎをしてやる。(奥さんは)後から来い!」 そう言うと、上に登ろうとはせずに横方向に、
藪こぎを始めました。 でも、30mほど進んだところであきらめた様です。
他のメンバーは、初めての場所でどうして良いものなのか判らず様子見のようです。
親父さん一人が道を開拓する為にチョーがんばっている! 感動もののドラマのようです。
その間、私は下って来たルートを再び登って赤いテープのある場所まで戻りました。
ほんの20m程だったのですけどね。 戻って良く見ると、雪に覆われた笹藪の盛り上がりを避けようとして、間違えて、
別のルートに入り込んでいたのでした。 右が正解なのに、つい左に、、、という、ちょっとした間違いです。
再び20m程降りて、皆が見える場所まで戻り、「やはり、こっちだよ!」と叫びました。
「どこなの?」、わずか50mでも下からではこちらの正確な方向が判らないのです。 「とにかく、登れ!」と言って、
皆を誘導しました。 雪道を50mも登るのはけっこうハードなものです。 でも、他に道は無い!
登って来た「藪こぎ親父」は鼻の中に笹の枝を刺して鼻血を流していました。 恐るべし藪こぎ!
自分で道を切り開くのはとても難しいってことのようです。
やっと合流できた皆さんと、「迷わずに良かったね」と、無事を祝いました。
10人は3つのパーティで、それぞれ始めての燧ケ岳登山だとのことでした。 残雪時にしては、ちょっと危険なパーティだったようですね。
でも、そんな彼らにしてみれば、私が単独行であることの方が驚きのようでした。 とにかく、めでたし、メデタシ、です。
「でも、あそこに落ちていた「ストック」は誰の物だろうね?」と、藪こぎ親父が云いました。
どうも今回道を間違えた彼らより、更なる先人がいた様です。 (それ以上は、怖くて、、、皆黙ってしまいました)
迷ったら場所が判る所まで引き返せ! これが登山の掟ですが、実感すると身にしみて納得です。
■ まとめ
10人もの人が雪道に足跡を残すと、後から来る人はそちらが正しいと思い込みます。 (普通ならそれが正しい判断!)
でも今回ご紹介したようなこともあるので、大事なのは「常に赤いマークを意識して歩く」のが、正しい道なのです。
春先の雪道は注意しないと、ある意味本当に危険が待っていますよ! 辛くても、戻る勇気を持ちましょう!
|